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演劇家・横山真が己の表現の追求・具現化のために発足したプロデュースユニット。生(LIVE)の表現にこだわり、演者から発せられる音・熱・呼吸・視覚的印象などを五感+αで感じられる作品創造を目指す。


by yukinone_makoto
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4/30(月) トレーニング稽古13日目(発表会)

4/30(月)13:00~17:00(発表会15:00~) @10BOX box-3

【外界への印象】
《天候》
●くもり
・風が程よく気持ちいいくらいの冷たさ
《空間》
・視覚的印象:ドアを開放していたのを見ていたためか、閉めてからも何故か前より部屋が明るく感じた
・音:小さい声も結構通るんだなということに気付いた
・その他:人が入ることで「あれ?ここって結構広いのかも」って感じた

【稽古前の身体状況】
・前日のイベントの影響で、声帯は荒れている
・とにかく身体全体がずんっと重い
・しかし重心は高いように感じる
・テンションがおかしい、妙に陽気な気分
・肩、股関節、首の、それぞれの付け根の部分がガチガチに固い

【今日のテーマ】
◆身体で動き、応ずる

【ふりかえり】
本日は、『遥かなり甲子園』の発表会。
ただでさえ稽古日数が少なかった上に、自分の場合はスケジュールの関係でこの前日の稽古へは参加できなかったため、正直に言えばかなりの不安を胸に抱いた状態で迎えた発表会であった。

が、そうは言ってもこういう日程であることは変えられない訳なのだから、その決まっていることの中でやれることをただただ全力でやってゆくだけだなと、そう割り切って臨むこととした。

そんな状況で迎えた発表会前の最後の合わせ。
両チーム共にあと1回ずつしか、しかも通しだけで返し稽古はできないということもあって、27日の稽古の際に残った自らの課題をどう解消してゆくか、がここでの一番の難題であった。

はっきりいって細かい調整をしている暇はない。
そこで、この最後の合わせでは、その27日の稽古で残った自らの問題点(A:相手役との距離感がやや遠い、B:周りと同調し過ぎている)とは真逆のベクトルへ極端に振り切って(A:とことん絡んでいく、B:思い切り距離をとってとことん拒絶してみる)臨んでみることで、この2つの経験を元にしてちょうどよい匙加減を浮き上がらせてみようとしてみた。

結果、この判断はいい方向へと転がってくれたかなと。

Aチームの方では他の役とより突っ込んだ関係性を築くことが可能であるなという手応えを得ることができたし、Bチームの方では拒絶だけでは自分の役が最後で爆発させるだけのフラストレーションには到達できないんだなということを確認できた。
もちろん、100%とはとても言い難い状態ではあったのだが、しかし、この今の与えられた状況下の中では最大限の成果をあげることができたのではないかと思う。


さて、そして迎えた発表会。

やはりお客さんがいるのといないのとでは全然違うなというのが一番の感想。

思いもかけないところでの反応が演者側の気付きを促してくれるため、こちらも思いもかけない行動をとることができるようになったりと、面白さの相乗効果というか笑いの循環を生み出すことができるのが、このコメディの醍醐味なのだなということを再確認させてもらえた。

そう、自分は長らくこの呼吸を忘れてしまっていた。
このお客さんとの呼吸のやり取りの楽しさや、難しさを。

たぶん、今回のこのトレーニング稽古で個人的に一番よかったことは、上演テキストが「コメディ」であったことだと思う。
元々自分はコメディには相当の苦手意識とコンプレックスを持っていたので、このトレーニング稽古期間中も途中まではかなり精神的にしんどかったのだけれども、終盤にきてだいぶ吹っ切れてきたためか、難しさやしんどさはあるものの、それすらも楽しめる心持ちで芝居へと臨むことができるようになっていた。

特にこの発表会当日は、この前日に東京の二子玉川で行ってきたアートイベントの中でも自らの心を開くためのきっかけとなる経験を得られたこともあってか、ほとんど気負いもなく臨むことができた。
お客さんの前でこんなにも肩の力を抜いて立つことができたのはいつぶりだろうか、、、というくらいに、リラックスした状態で板の上にいられた。


そのお陰で、自らの俳優としての足りない部分がだいぶ具体的に見えてくるようになった。
これまで誤魔化していたり、見ないようにしていた部分と、いいとか悪いとかそういうフィルターを通すことなく単なる事実として冷静に向き合えるようになれたのだ。

例えば身体のコントロールやキレなどは、今回の発表会でも全く以てお話にならないくらいに使えていなかったし、かなり不用意な動きが多かった。
芝居において、動きにノイズが混じってもいいとは思うのだが、それは役に必要な身体性が備わった上でのノイズであるからこそ生きてくる訳で、役の身体としてはまだ不十分な状態であった今回、それはほとんど有効に機能はしていなかったのではないかと思う。

まあ、他にも役の年齢のことや方言のことなど、他にも突っ込もうと思えばいくらでも突っ込むことができたと思うし、作品としては石川さんも仰っていたように「雑」であったと思う。
それは稽古日数の少なさとも無関係ではないとは思うが、それは承知の上で臨んでいる以上は言い訳にしかならない。

が、自分としては、今回、それらの要素を後回しにしてでも優先したいことがあった。
そしてそれが、この“トレーニング”稽古だからこそ思い切ってやれることであったと思う。

その優先したいこととは何かというと「役を力業でねじ伏せ、自分のものにする」ということ。
そうすることによって、これまでとは違った、自らの役に対するアプローチを探ってみようと思ったのだ。

正直に言って、この発想で役と向き合うことは、自分は好きではない。
むしろこういう「役を自分に引き寄せる」ようなアプローチは大嫌いである。

が、そういうアプローチだからこそできることというのもあると思うし、そもそも、そんなに役を自分に引き寄せることが悪いことなのか?ということを実際に試してみることで、身を以て確認したかったのだ。

それは結果としてどうだったのか、というと、「やっぱり自分には合わないやり方だな」という実感が一番大きな感想だったのだけれども、それとは別のところでは、「合わなかったけれども、必要な部分もあるかも」という実感も同時に得られたのだった。

繊細に、丁寧に役と向き合って、確かな土台を築いてゆくこともたしかに必要なことなのだけれども、時には多少無茶をして力業や勢いで役に対して仕掛けてゆくこともありだなと、いやむしろ、そうしてみることで思いもしなかったような役の一面も見えて、役の深みが増してくるんじゃないかという風にも考えられるなと、思った訳だ。

そして、合わないとはいえ、このアプローチでも自分は役と向き合えるんだなということが分かったことも大きかったなと思う。
元々、これまでの自分のやり方だけではもう頭打ちというか、より上を目指すには自分の役との向き合い方をバージョンアップさせる必要があるなと感じていたので、今回のこの経験は、そのきっかけに利用できるかもしれない。
単純に、ひとつのやり方で行き詰った時に別領域からも攻めることができるというのは、停滞を生むリスクを減らすことに繋がりもする訳で、これはとても心強い。


まあ、何はともあれ、このトレーニング稽古を経て、自らの俳優としての現状を色々と炙り出すことができた。

この結果を生かして、『方丈の海』の稽古再開までにやれることをやった上で臨みたいなと、そう思っている。


次回の稽古(『方丈の海』稽古再開)は5/16(水)になります。

【『方丈の海』稽古再開(5/16)に向けて】
◆宿題…方言の研究と、身体訓練(小節の身体性を強く意識して)
◆テーマ…台詞を丁寧に受けとり、軽やかに手放す


横山 真
by yukinone_makoto | 2012-05-02 15:51 | 稽古場日記